エピソード6
- GSIエンバーマー
- 2020年10月14日
- 読了時間: 3分
更新日:2023年3月24日

こんにちは。
私とご家族のちょっとしたお話を綴ってみるエピソードシリーズ、6回目です。
エンバーミングを希望される理由は、ご家族それぞれに違います。
今の綺麗な状態、そのままを保っていてほしい。
お葬儀まで少し日があるので、お身体のことが心配。
エンバーミングの処置が必要なほど痩せてしまった。
暖房をつけて同じ部屋で眠りたい。
生前にエンバーミングを希望していたから、それを叶えてあげたい。
ご家族、故人様の希望を私たちは引き継ぎ、エンバーミングを施しています。
ご家族の中には、「エンバーミング」という言葉を聞いたことがないけれど、
故人様にできる最善の処置だからと希望するという方もいらっしゃいます。
以前、ご家族から「1番いいことをしてあげたかったし、1番いいことをしてあげたの!って皆に言いたかった。ほんとにしてもらって良かった」
と、おっしゃっていただいたことがありました。
本当に色んな理由でエンバーミングを希望される方がいるんだなと思った出来事です。
エンバーミングはエンバーミングセンターへ故人様をお連れして施術をします。
その間、ご家族は故人様の帰りを自宅で待つ…というのがほとんどなのですが、
エンバーミングセンターまで故人様に付き添われ、施術が終了するまで待つご家族も、
時々ですがいらっしゃいます。
もちろん処置室の中へは入っていただけないので、別室でお待ちいただくことになります。
先日も、そういうご家族がいらっしゃいました。
3時間程度、施術が終了するまでお待ちいただいたので、せっかくなら1番に故人様に会っていただこうと思い、お声がけしました。
涙ぐみながら「綺麗にしてもらって良かったね。調子が良かった頃に戻りました。ありがとうございます」とおっしゃいました。その瞳は、涙ぐんでいたからなのか、とてもキラキラしていたのを覚えています。
故人様のご帰宅の準備が整い、ご家族と一緒に自宅へと戻るとき、私も同行をさせていただきました。
故人様をご安置後、ご家族の皆さまにご挨拶をしましたが、故人様に付き添われたご家族の姿が見えず、しばらく待っていたものの、故人様をご安置した部屋にはお戻りになりませんでした。
私は、何かすることがあるんだな、ご挨拶ができないのは残念だけどと思いつつ、玄関を出て車へ戻ろうとすると、
故人様に付き添われたご家族が、ざわざわ外まで出てきてくださって「本当にありがとうございました」とおっしゃると、「ちょっとちょっと」と足早にすぐに部屋まで戻り、故人様の奥様を玄関まで連れてきてくださいました。
そして、「この方が、綺麗にしてくださったんだよ。」と、恐縮してしまうほど頭を深々と下げ、お礼をおっしゃってくださいました。
闘病でしんどかった日々、何かしてあげたかったけど何も出来なかった自分を責める気持ち。
いろんな気持ちがご家族の心の中をぐるぐるとしていたかもしれないけれど、
エンバーミングセンターまで付き添われたご家族の「調子の良かった頃に戻りました」という言葉は、いい思い出を思い出し、やっと何かしてあげられたという気持ちを持つことが出来たのかもしれないなと思いました。
悲しいはずの対面なのに、キラキラとした瞳で故人様を見つめるご家族。
ご家族のそういう瞳を見るたび、私は不思議な気持ちになりましたが、
ご家族の気持ちの変化がそうさせているのかもしれないなと思いました。
一瞬で人の気持ちを動かすことができるエンバーミング。
私はエンバーミングを施すエンバーマーですが、
改めてエンバーミングやエンバーマーって、すごい仕事だなと思った出来事でありました。
それではまた、お会いしましょう。
過去のエピソードも どうぞ。
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